山のごと米粒のごときみほとけの 生じて消ゆるこの刹那かな
滴塵043
本文
山のごと米粒のごときみほとけの 生じて消ゆるこの刹那かな
形式 #短歌
カテゴリ #1.仏法・教義
ラベル #仏 #無常 #精神 #密教 #山
キーワード #生じる #消える #刹那 #米粒 #山
要点
無数の仏が刹那に生じて消える様を、自然の大きさと小ささで表現。密教の観想法。
現代語訳
山のようにも、米粒のようにも見える仏たちが、この刹那に生じて消えていく。
注釈
刹那:非常に短い瞬間、仏教の時間概念。
山のごと米粒のごとき:巨大なもの(宇宙的スケール)と、極小なもの(時間的スケール)の対比。
生じて消ゆる:生まれ、そして滅する。無常。
解説
無常と仏法の広大さ・微細さを同時に描く短歌。山と米粒の対比で、存在の大小を超えた刹那の尊さを表現。
深掘り_嵯峨
宇宙的なスケールで無常(生滅変化)の真理を捉えた、非常にスケールの大きな歌です。
「みほとけ」(真理、あるいは仏の世界)でさえ、山のように巨大であろうと、米粒のように微小であろうと、「刹那」という一瞬一瞬のうちに「生じて消ゆる」という無常の法則から逃れられない。唯識の世界観。人間の感覚の限界を表現しています。
万物は流転するという根本的な真理を、空間的・時間的な極限の対比を用いて表現することで、圧倒的な無常観と、それを冷静に見つめる悟りの境地を描き出しています。